僕は新卒から約10年間国内外の金融機関でトレーダーをしていた。

計3つの金融機関で主に金利がメインだったが数年間は為替のトレーダーを行った。

大抵の上司や先輩はもちろん知識も経験も自分より秀でていて教わる部分が多かった。特に、新卒で入ったときの先輩には(おそらく初めて近くで見たプロのトレーダーだったことは大きく起因しているだろうが)強烈な凄みを感じていた。今でもあの人の影響は大きく受けていると思う。

ただ唯一、一人だけトレーディングの才能を一切感じず自分はなんでこの人の下で働いているだろうと思う人物がいた。

僕はその不満を公にしていたので、すぐに別チームに移れたし、その人物も数年後にトレーディングから外れることになった。

先ほど投資に失敗する人の行動パターンという記事を書いていたら、その上司のことを思い出していまこんな記事を書いているわけだ。

忘れもしない、意見を言ったら怒られた事件

311東日本大震災前後の民主党政権時代、みんなも記憶にあると思うけど歴史的な円高が進んだ時代だ。

ドル円は80円台で推移していたが、当時はそれでもヒストリカルに見てもドル円は底に近い水準で推移していた。

僕の上司はチームで一番大きなポートフォリオを管理していのだが、そのポジションは大きく円売りポジションだった。

この円高局面ではかなり居心地が悪いであろうポジション。

しかも状況は円安に傾く兆しはほぼなかったので、僕は意を決して上司にポジションを閉じたほうがいいのでは?と自分の意見を言って見たのだ。

もともと僕はその上司と馬が合わなかったから、普段からの会話はほぼなく、唐突にポジションに対する意見を言った。確かにこの流れは良くなかったと思う。関係性がよくない相手からいきなり自分のポジションを否定されたら嫌な思いをするだろう。

でも同じチームで働いている以上、これ以上のマイナスを出されたら僕の評価にも関わるから、唐突にでも行く他なかった。

上司は僕の意見に「こんなどん底で売れってのか?無理に決まってるだろ」と一蹴。

その後ドル円はさらに円高が進行して70円台が定着。数ヶ月後、上司は僕が意見した日よりもさらに低い位置で損切りをしていた。

そんな時に誕生したのが安倍政権と黒田日銀総裁。

僕はここぞとばかりにドルコールを買いまくり、ドル円のデルタロングとガンマロングを作りまくったわけだけど、上司は大きなロスを確定させたとあって常にポジションはニュートラル。

全くもってやったれらない状況だった。

 

そもそも僕がその上司にトレーディングの才能がないと思ったのは以下の2点の理由からだ。

相場感にヘッジをかける

相場感とは、極端に言ってしまえば上がるか下がるかを予想するゲームだ。

その上司は相場感を話すときに必ずこう言う。

「ドル円は〇〇の理由で上がると思う。でも●●があるから下がる可能性もある。」

相場感にヘッジをかけてんじゃねーよ、といつも思っていた。で、上がるか下がるかどっちなんですか?

もしくはこんなことも言う。

「雇用統計は良ければ上がる、悪ければ下がるだろう。」

当たり前じゃボケ!素人でも言えるコメントを堂々とするな。

チームリーダーなのに目標達成にこだわっていない

まさにサラリーマントレーダーだと感じたわけだけど、上から貼られているチーム目標の達成は最初から想定せず、マイナスで終わらせなければ良し、と言う考えでチーム運営をしていた。

相場感にさえヘッジをかけてしまう人だから、実際のポジションでも大きなリスクが取れるはずがないのは当たり前だが。(上の損失が出た円売りポジションは前任から引き継いだもの。)

上司が新規で作るポジションはほとんどデルタを傾けさせない。傾けさせたとしても、新人レベルがとるリスク量だった。

 

リスクを取らなければリターンはありませんぞ。